こういう物を棺の中へ持たせてあげる事は、不謹慎でしょうか?
と質問された。
僕は、全然イイ事だと思いますよ!とお答えした。
更に、ご提案をさせて頂いた。
それならお父さんの為に用意したチョコレートを差し支えなければ、実際食べて貰っては如何ですか?
家族)えっ!?
死後の処置を始める前にそのチョコレートのカケラを口に含んであげては如何ですか?
お手伝いさせて頂きますよ!と話した
奇想天外だったのか娘さんは勿論、奥さんまでそんな事出来るのですか?
と少し頬の口角を上げながら強めの
反応をして来た。
実は、僕もこういうご提案は、人に寄っては不謹慎心と思われてしまうので勇気がいる。
少しホッとした。
大丈夫!
僕がバックアップさせて頂ます。安心して食べさせてあげて!
とお答えした。
では本番。
隣の部屋に居るご本人の側へ行く。
医療機材を全て取り外されたそのままのお父さんが寝ている。
その姿は、まだ体も温かく、ご容体に不安はない。
この体温を最大限に上手く活かせればイイな。とイメージしながら先にお顔やお口の中を綺麗にしてあげた。
その際、口腔内出血や不安材料はないか?お口の中を家族に覗かせて大丈夫か?チェックをした。
大丈夫だ!いける! しかもこの体温がチョコを溶かす要因になればと思った。
僕の頭の中には、チョコを含んで頂くにあたり、ご容体に何が起こっても
対処出来るという裏付けが頭の中で整った。
今ならより家族が知っているパパのリアル感を感じてもらえるタイミング!
お二人を本人の横に来て頂き僕は、
口を開け直した。そして・・・舌の上に乗せて食べさせてあげて!と伝えた。
故人の口には、小さなチョコのカケラ2つを含んだ。
体温でゆっくり溶けていくチョコ。
その様子も見せてあげた。成功!
飲物も少し含ませてあげたら‥と再提案した。自販機からホットコーヒーのブラックを嬉しそうに買ってきた。二人は、それを更に少し含んであげた。
最後に温かいホットタオルでパパの顔をお二人で拭きながら、
パパ‥と家族はつのる思いを話かけている。僕はそっと離れた
三人だけの時間を作ってあげた。
お父さんを囲むその家族の姿は、誰にも近づく事の出来ない大切な時となっていた。
本人達だけの世界であり、この思い出がこれからのお二人の人生の宝物に
なればと祈るばかり。。
by 中川十