苦しみは極限まで達する。
「そんなに苦しいんだったら、ドアを開けて逃げればいいのに」
と私は愚問をしてしまった。
「死にたいんだからそんなことするわけないじゃないですか」
とあきれて言われた。
車内には、白目を剥きもがき苦しんで、悶絶している自殺者がいる。
しかし、まだ死後発見が早ければ、遺体の硬直が解けてくる時間になると、
まだ皮膚がしっかりしているので、葬儀社はまぶたを閉じてあげたり、
化粧をしておだやかな表情にすることができる。
告別式に集まった参列者が、棺の窓を覗き込んで故人のやすらかな顔を見ると、
美しい死に顔だったという評価を下すのである。
これが世に広まった原因ではないかと中川は言う。
しかし、実際にはもっと悲惨な状態になることが多い。
車内がサウナ風呂以上の高温になるので、熱湯をかけられたようにやけどみたいな
火ぶくれ状態になる。苦しむので頭部がうっ血状態になり、血液が頭部に集まる。